日本テレビは、開局70年を機に宇宙事業を本格化させ、現在は宇宙ビジネス事務局を中心に取り組みを進めています。前身となる「R&Dラボ」という取り組みを起点に、2023年6月に専門組織として独立しました。当初は兼務メンバーを中心とした体制でしたが、現在は3〜4名の専任メンバーが事業を推進。さらに、2026年6月の組織改編では社長室から経営戦略局へ移管され、宇宙ビジネスを推進する体制へと発展しています。
今回は、Space BDが提供する宇宙産業人材 実践型育成プログラム「HURDLES 衛星システム開発編」のOn-demandとWorkshopを受講した小林景一さんと鹿島千晴さんにインタビュー。HURDLESを導入した背景や得られた学び、今後の宇宙ビジネスの展望について伺いました。

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- 日本テレビ 小林 景一さん
小林さん:現在、当社では大きく2つの取り組みを進めています。
1つは、衛星データを活用した報道のアップデートです。当社の報道局と連携し、衛星データを調査報道に生かす手法を約1年間にわたって検証してきました。その代表的なプロジェクトが「TerraCaster」です。気象衛星「ひまわり」の観測データをもとに、AIによる補完技術で滑らかな地球映像を生成し、宇宙から地球を眺めているような映像体験を実現しています。報道に加え、環境教育や展示などへの活用も見据え、社会実装と事業化を進めています。
もう1つは、宇宙をより身近に感じてもらうためのエンターテインメントコンテンツの開発です。これまでにも、XR技術で宇宙旅行を疑似体験できる「XRバス」や、日本橋に月面空間を再現し、謎解きと組み合わせた「月面ワンダー」などを実施してきました。宇宙を「見るもの」から「体験するもの」へ変えることで、宇宙に馴染みのない方にも興味をもってもらうことを目指しています。
小林さん:主な役割は、これまで報道部門で築いてきた社内外のネットワークを生かし、宇宙ビジネスの新たなつながりを作ることです。もともとは、報道・情報番組の制作に長く携わっており、総合ニュースセンター長としてニュース放送全体の責任者を務めました。定年を迎えた際に報道以外の分野にも挑戦したいと希望し、宇宙ビジネス事務局の立ち上げと同時に異動しました。専任メンバーとしては私が最初です。社内では報道や情報番組など各部署との橋渡しを行い、社外では宇宙関連のカンファレンスやイベントにも積極的に参加し、宇宙関連企業や研究機関とのネットワークづくりに取り組んでいます。
鹿島さん:入社4年目で、DX推進局データ戦略部でTVerなどのインターネット配信に関わるエンジニア業務をしています。大学院時代に宇宙系の研究をしていたこともあり、「そのバックグラウンドを生かして宇宙ビジネスもやってみたらどうか」と声をかけてもらい、現在は兼任という形で宇宙ビジネス事務局にも所属しています。
小林さん:宇宙ビジネスを進めるなかで、これまでの知識だけでは判断できない領域が出てきたからです。我々は、衛星や宇宙技術を活用する側、いわゆる川下の立場で事業を考えていました。ところが、「自分たちで人工衛星を打ち上げられないか」という議論が出るようになり、衛星を開発する知識も重要になってきました。
社内では、宇宙ビジネス事務局と前身のR&Dラボのメンバーを中心に週1回の共有会を行っていました。ただ、個々の経験や専門分野を共有する形であったため、宇宙産業全体の構造や各分野のつながりまで体系的に理解するのは難しい状況でした。個別の知識を積み重ねるだけでなく、宇宙産業全体の基礎知識から事業化までを一貫して学ぶ機会が必要だと感じました。
鹿島さん:私は、大学院時代に赤外線を用いた宇宙観測を研究していましたが、それは衛星技術のごく一部に過ぎません。宇宙事業に携わってみると、衛星の姿勢制御やロケット、打ち上げ機の選定、軌道投入までの準備や運用など、これまで知らなかった領域が数多くあることに気づきました。
また、衛星はあくまで課題を解決する手段の一つです。どのような社会課題に対して衛星を活用し、どんな価値を生み出すのか。ミッション設計から事業化まで、体系的に宇宙ビジネス全体を学びたいと考え、HURDLESを受講しました。

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- HURDLESプログラムの中で発表する小林さん
小林さん:これまで、ロケットや人工衛星は専門家が開発するもので、私たちは完成した技術を活用する立場だと思っていました。しかし、演習を通じて、その認識がガラリと変わりました。お客様の要望を正しく捉えて、それをどうシステムとして実現するかを考えるにおいては、システム開発と共通している部分が多いです。ただし、衛星は一度打ち上げると簡単に修理できないため、開発段階で細かく要件をつめて、関係者と綿密に議論する必要があるという難しさも同時に知れました。
鹿島さん:実際のワークショップでは、しっかりと我々がヒアリングをしなければ、十分に要求を詰めきれない場面がありました。お客様のニーズが明確であれば、仕様に落とし込むことはさほど大変ではありません。ただ、お客様自身が課題やニーズに気づいていなかったり、言葉にできていなかったりすることもあります。
だからこそ、質問を重ねながらお客様の中にある本当のニーズを引き出すことが重要であると学びました。これは、今後の事業開発でも生かせるところだと思っています。

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- 日本テレビ 鹿島 千晴さん
鹿島さん:衛星開発は、ミッションを決めて設計し、試験を重ねて打ち上げて運用するといった長いプロセスがあります。だからこそ、衛星プロジェクトのミッション実現まで1年間密着して追う番組があったら面白いのではないかと思いましたね。技術だけでなく、そこに関わる人たちの葛藤や挑戦を伝えていけば、宇宙に詳しくない人にも刺さるコンテンツになるのではないかと感じました。
小林さん:一番ワクワクしたのは、人工衛星やロケットなど宇宙ビジネスにエンターテインメントの要素を掛け合わせることで、これまでにない体験をつくれるかもしれないと思ったことです。私たちはテレビ局なので、衛星をもつことが目的ではありません。何を撮るのか、どんな映像を届けられるのか、そしてそれをどう魅せていくかが重要になります。そこまで考えていくと、人工衛星をデータ取得の手段ではなく、新しい映像コンテンツを生み出す手段として捉えられます。そこに、日本テレビならではの宇宙ビジネスの可能性があるのではないかと感じています。
小林さん:日本テレビでは、周年など節目に様々な挑戦をしてきました。エベレスト山頂からの生中継もその一つです。そうした挑戦の延長線上にある夢が「月からの生中継」です。アナウンサーが実際に月へ行けるかどうかは別にして、宇宙と視聴者を直接つなぐ新しい体験を実現したいと思っています。
もう一つ力を入れたいのが、宇宙を教育に生かす取り組みですね。その代表例が、先にも紹介した「TerraCaster」ですね。気象衛星「ひまわり」の観測データから地球の姿を滑らかな映像として可視化し、日々変化する地球の営みや美しさを直感的に感じてもらうことを目指しています。
こうしたコンテンツを学校や公共施設などに届け、地球環境や自然について考えるきっかけをつくっていきたい。宇宙を遠い世界の話で終わらせず、日常の中で感じてもらえるコンテンツへと発展させていきたいです。

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- TERRACASTER
小林さん:宇宙ビジネスは、一社単独で完結できるものではありません。だからこそ、様々な企業と共創することが重要だと考えています。今後、宇宙は新たな経済圏として発展し、一次産業をはじめ、防災、教育、エンターテインメントなど幅広い分野で活用が広がっていくでしょう。
私たちは、テレビ局として人々に感動や体験を届け、多くの方へ情報を発信できる強みがあります。その発信力を生かしながら、企業や研究機関、自治体など多様なパートナーと新たな価値を共創し、宇宙をより身近なものにしていきたいと考えています。
宇宙ビジネスを育てることは、新しい産業や社会の可能性を広げることにつながります。少しでも宇宙に興味をお持ちであれば、ぜひ一緒に新しい価値を生み出し、より良い社会をつくっていきましょう。

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- 小林さん(左)、鹿島さん(中央)と
Space BD 教育事業ユニット長の平野(右)



