株式会社パスコは、航空測量やGIS(地理情報システム)などの空間情報技術を基に、防災・減災、国土管理、インフラ管理など幅広い分野における社会課題の解決に貢献しています。同社は、2005年から衛星事業に本格参入し、衛星データの販売やAIを用いた解析ソリューションを展開しています。近年、衛星のコンステレーション化やデータ利用の高度化が進むなかで、より一層価値の高いサービスの創出や、それを担う人材の育成が求められていました。 同社 衛星事業部 宇宙エンジニアリング部は、Space BDが提供する宇宙産業人材 実践型育成プログラム「HURDLES 衛星システム開発編」のOn-demand講座およびWorkshopを受講。なぜ、バリューチェーンの下流にあたる衛星データの利活用に携わる会社が上流の衛星システムの開発について学ぶ必要があったのか。今回は、実際に受講した平山 康博(ひらやま・やすひろ)さんに、HURDLESを導入した経緯や、得られた成果と今後の展望などについて伺いました。

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- パスコ 平山 康博さん
2005年に合成開口レーダ衛星「TerraSAR-X」による撮影データの日本国内への独占販売権と全世界への販売権を取得したことをきっかけに、本格的に衛星事業を開始しました。これまで培ってきた測量・空間情報技術と、人工衛星から取得できる広域かつ高精度なデータを組み合わせることで、衛星データの提供だけではなく、解析やソリューション提供まで一貫したサービス展開を進めています。
また2025年2月には、NTTデータが設立したMarble Visionsと資本業務提携を行いました。今後は、衛星による高分解能かつ高精度な三次元情報の取得を進め、地球上の変化をより詳細に把握できる技術基盤を整えることで、防災、インフラ管理、都市計画など幅広い分野で社会課題の解決に貢献していきたいと考えています。
私は現在、宇宙エンジニアリング部で衛星開発や運用に関わる業務を幅広く担当しています。特に、近年取り組んでいるMarble Visionsとの地球観測衛星開発では、衛星を運用する立場から、開発側へ必要な機能や改善点をフィードバックする役割を担っています。具体的には、衛星運用時に使用するツールの開発や、運用フローを効率化するための仕組みづくりなどに取り組んでいます。また、当社が以前から運用している地球観測衛星「ASNARO-1」の衛星システム保守や機能改善にも携わっています。
衛星で実現できることや技術的な制約を理解していなければ、利用側から求められる機能やサービスを要望として伝えるだけになってしまうと感じたからです。また、衛星開発側から「技術的に難しい」と回答された際にも、「なぜ難しいのか」や「どの部分を調整すれば実現の可能性があるのか」などを理解・判断ができません。
また、他社から衛星システムを調達する際には、技術的な前提や設計思想を十分に理解したうえで議論する必要があります。しかし、衛星開発に関する知識が不足していると、メーカーとの折衝においてこちらの要望を十分に伝えきれなかったり、技術的な判断を相手側に委ねざるを得なかったりする場面も出てきてしまいます。そのような背景から、衛星の仕組みそのものを理解する必要性を強く感じるようになりました。
HURDLESを選んだ決め手は、座学だけではなく手を動かしながら学べる実践的なプログラムである点です。講義を聞くだけでは理解度を確認することが難しく、また知識が定着しにくい側面もあります。その点、HURDLESでは実際に手を動かしてアウトプットする機会があるため、自分がどこまで理解できているかを確認しながら学習を進められる点に魅力を感じました。
また、他企業から参加される方々とディスカッションできる環境があることも大きな理由です。異なる立場や経験をもつ方と意見交換することで、自分だけでは気づけない視点を得られたり、理解を深めたりできると考えています。
くわえて、本プログラムを監修されている千葉工業大学の趙先生から紹介や説明を受けたことも、参加を決める後押しになりました。

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- HURDLESプログラムの中で発表する平山さん
「どのような衛星が必要なのか」という利用側のニーズ整理から、要求仕様の策定、設計、詳細設計に至るまで、衛星が完成するまでの一連の流れを学べたことは非常に有意義でした。
また、講座の中で扱われた制約条件についての内容は強く印象に残っています。衛星開発では、衛星本体の設計だけでなく、運用側の視点でもさまざまな制約が発生します。これまで自分たちが把握していなかった制約条件もあり、さまざまな専門分野の方とコミュニケーションを図りながら進めていくことの重要性を改めて感じましたね。
いくつかあるのですが、まずコミュニケーションの重要性ですね。円滑にプロジェクトを進めるには、関係者との密なコミュニケーションが欠かせません。表面的なやり取りだけでは必要な情報を十分に得られないことがあります。こちらから踏み込んで技術的な質問をすることではじめて、ニーズや技術的な課題がクリアになるケースも少なくありません。
さらに、課題解決に対する考え方も変わりました。以前は「衛星でどう実現するか」という視点に寄りがちでしたが、ワークショップを通して、あくまでも衛星は課題解決の手段の一つであるということが重要だと学びました。
例えば、システムだけで解決するのが難しい場合には、運用を工夫することで対応できるケースもあります。逆に、運用だけで難しい場合はシステム側で補うという選択肢もあります。このように、一つの方法にとらわれるのではなく、複数の手段を組み合わせながら最適な解決策を考える視点は、実際の業務にも大きく生かせる学びでした。
HURDLESで得た学びは、現在のプロジェクトだけでなく、チーム内での情報共有やコミュニケーションにも活かされています。特に大きく変わったのは、自分が学んだことを社内にも広げていきたいという意識が生まれたことです。受講した内容をもとに、少しずつ社内で勉強会を開催しています。また、日々のコミュニケーションの取り方にも変化がありました。衛星開発では、小さな認識の違いが後工程で大きなトラブルに発展することがあります。そのため、不明点や疑問に思うことがあれば、そのまま進めずに関係者同士で認識をすり合わせることをこれまで以上に意識するようになりました。
まずは、Marble Visionsで進めている次期光学衛星ミッションを成功させることが直近の目標ですね。このプロジェクトは、ALOS-3の後継ミッションという位置付けで、高精度な地球観測データを継続的に提供していくうえで非常に重要な役割を担っています。そのため、まずはこの衛星を安定した運用につなげることが何よりも重要だと考えています。
一方で、当社の役割は衛星のシステム開発・運用だけにとどまりません。衛星データの販売代理店として、光学衛星やSAR衛星などさまざまな衛星データを取り扱い、お客様に活用していただくための仕組みづくりも重要なミッションです。
衛星データの利用が広がれば、事業者の新規参入が進み、利用できるデータの種類や量も増えていきます。さらに、衛星の打ち上げ需要が拡大すれば、打ち上げサービスや関連産業の発展にもつながります。そのため、私たちは衛星データを提供するだけではなく、衛星データを活用する市場や商流を広げる役割も担っていきたいと考えています。
宇宙ビジネスは、衛星の開発だけでは成り立ちません。衛星を利用するサービス、地上システム、運用体制など、多くの要素が組み合わさってはじめて事業として成立します。そのため、一社だけですべてを担うことは難しく、スタートアップや研究機関、非宇宙企業などさまざまなプレイヤーとの連携や共創が不可欠だと考えています。
一方で、これから参入を検討する方々の中には、「何から情報を集めれば良いのかわからない」「自社の技術を宇宙分野でどう活用できるかわからない」「どの企業と連携すれば良いのかわからない」と感じ、一歩を踏み出せない方も多いかと思います。
私たちは、衛星データをより安くより手軽に活用できる環境を整えることで、多くの企業が宇宙ビジネスへ参入しやすい土台をつくっていきたいと考えています。そして、お互いに足りない部分を補い合いながら、新しい価値を共に生み出す仲間が増えていけば、宇宙産業全体もさらに発展していくはずです。

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- 照谷さん(左)、平山さん(中央左)、三浦さん(中央右)と
Space BDでHURDLESを推進する教育事業ユニットの笠原(右)


