100万分の1の重力というユニークな環境を活かし、ライフサイエンス領域で多様な実験が行われています。
これまでの事例をヒントに、あなたのアイデアを宇宙で形にしてみませんか。

Why in Space

宇宙で実験すると良い理由

結晶化実験
対流の影響を受けずに結晶成長する

地上では密度差により対流が発生し、結晶核の周りで急激な濃度変化が起こります。これが分子配列の乱れとなり、小さく形のぼやけた結晶が生成されてしまいます。


一方で、微小重力環境では、「対流」や「沈降」が発生しないため、濃度勾配が維持された状態で結晶が成長します。その結果、分子が規則正しく並んだ、大きくきれいな結晶を得ることができます。

細胞実験
細胞動態の理解を促進する

地上では、細胞は重力を機械的刺激として感知し、その形態や機能を調整しています。重力刺激を失うことにより、細胞骨格や遺伝子発現の変化、増殖、分化、代謝などの機能に変化が生じます。このような細胞変化を研究することは、細胞動態の理解を促進し、疾患や細胞老化のメカニズム解明においても新しい手がかりになると考えられます。

自然に細胞が三次元構造を形成する

微小重力環境では、「沈降」や「対流」が起こらないので、細胞は自然に凝集して立体的な構造を形成します。これは細胞がヒトの体内に近い環境と考えられており、複雑な細胞組織の構築や、細胞同士のコミュニケーションなどを理解する、新しい手段になると考えられます。

がんや加齢研究をスピードアップする

宇宙では、微小重力や宇宙放射線の影響により、細胞の老化やがんの増悪が地上よりも速く進行することがあります。これを細胞変化の「加速環境」として活用することで、疾患モデルの構築を短期間化し、病態研究や薬剤検証をスピードアップできると考えられます。

Exploring Use Cases

微小重力環境の活用事例

Case1:皮下注製剤の開発・製造に貢献 ▼

・なぜ宇宙を利用したのか
静脈投与から皮下注射への剤型変更は、患者さんの通院負担と医療機関の保管負担を軽減するというメリットがあります。モノクローナル抗体薬の皮下注射を開発するため、タンパク構造をより詳しく理解する高分解能な結晶を得ることを期待し、微小重力環境を利用した実験が行われました。


・宇宙実験からの成果
ISSでの実験から、均一で単峰性の粒径分布をもつ結晶性懸濁液を高収率で生成する条件が特定されました。この宇宙実験で得られた知見を、地上の製造技術へフィードバックすることで、新たな皮下注射製剤の開発・製造へ繋がりました。

 

・プロジェクトの概要
宇宙実験を検討していた当時、地上で得られていた結晶は分解能・サイズともに期待値に対して十分ではありませんでした。「微小重力環境であれば、より大きく高分解能な結晶が生成できる」との仮説から実験に至りました。


本プロジェクトでは、ISSを利用して3度の結晶化実験が行われ、「均一で単峰性の粒径分布をもつ結晶性懸濁液を高収率で生成する条件」を特定しました。さらに、宇宙で得られた懸濁液は粘性が低く、より均一に沈降することが確認されました。これらの知見は、地上での結晶性懸濁液の製造に応用され、注射製剤に適した結晶性懸濁液の製造に繋がりました。

 

Reference: NPJ Microgravity. 2019 Dec 2;5:28. doi: 10.1038/s41526-019-0090-3

 

Case2:神経変性疾患の病態解明を目指して ▼

・なぜ宇宙を利用したのか
多発性硬化症やパーキンソン病は、免疫系が病態に関与していると考えられていますが、根本的な原因は未だ解明されていません。特に、脳の免疫細胞である「ミクログリア」の挙動を理解することが、病態解明の鍵とされています。細胞は重力刺激に影響を受けるため、微小重力環境での細胞変化を研究することは、病態解明の新たな糸口になると期待されました。

 

・宇宙実験からの成果
皮質オルガノイドおよびドーパミン作動性オルガノイドを宇宙で培養した結果、細胞増殖に関連する遺伝子の発現が減少し、成熟に関連する遺伝子の発現が増加しました。これらの結果は、宇宙環境で細胞の成熟が加速する可能性を示唆しています。

 

・プロジェクトの概要
これまでの研究から、微小重力環境が前庭機能や認知機能に影響を与える可能性が示唆されています。本プロジェクトでは、「微小重力環境が神経細胞に与える影響」を調査することを目的に実験が行われました。

患者由来のiPS細胞から作製したオルガノイドをISSへ運び、30日間の長期培養が行われました。宇宙で培養したオルガノイドは、神経細胞の分化関連マーカーが低下し、成熟関連マーカーが増加しました。本実験から、微小重力環境では神経前駆細胞の分化が加速する可能性が示されました。


Reference: Stem Cells Translational Medicine, Volume 13, Issue 12, December 2024, Pages 1186–1197

 

Case3:新しいがん治療薬の開発に貢献 ▼

・なぜ宇宙を利用したのか
がん細胞の形成や増殖のメカニズムを理解するためには、ヒトの体内と同じように立体的に細胞を観察することが大切と考えられています。微小重力環境では、細胞が浮遊した状態で自然に凝集するため、容易に細胞を立体培養できるという特徴があります。この利点を活用し、がんの増殖に関わる経路を解明するため、宇宙での実験が選ばれました。

 

・宇宙実験からの成果
ISSで培養したがん細胞から、がんの増殖に重要な役割を果たす細胞内環境や、それを制御するタンパク質に関連する因子が発見されました。この実験で得られた知見を基に、特定のターゲットに結合する低分子治療薬が開発され、臨床応用に向けた研究開発が進められています。

 

・プロジェクトの概要
本プロジェクトでは、乳がん細胞と前立腺がん細胞をISSへ運び、軌道上で1週間の培養が行われました。軌道上で培養したがん細胞の分析から、細胞内環境や、それを制御するタンパク質に関連する因子が発見されました。さらに細胞内制御因子が、がん細胞の生存・転移・薬剤耐性に重要な役割を果たしていることも確認されました。この実験で得られた知見は、新しいがん治療薬の開発に活かされ、臨床応用に向けた研究開発が進められています。


Reference: Oncogene 44, 494–512 (2025)

 

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